2009年11月20日金曜日

Schwarzerdrache W. träumte: - シュヴァルツァードゥラッヘ・Wは夢を見た

気が付くと其処は何処かの施設の中であった。取り敢えず探索でもしようかと
二・三歩程度足を進めた所、W(ヴェー)は後ろから声を掛けられた。

振り向くと、そのWに気さくに話しかけてきた其の男性は、
Wの小学生時代の級友であると直ぐに判った。
昔の想い出達を愉しく話している内に「出欠ランプ」の前まで来た。

彼は其の‐確かに彼の名前の札なのだが‐見慣れぬミドルネームが間に挟まった
其の札のランプを押して奥へと消えていった。其の装置にWの名は無かった。

訊くと、此の施設は入所時に新しくミドルネームが言い渡されるらしいのだ。
Wは此れに凄まじい嫌悪感を覚え、恐れ戦(おのの)き乍ら其処で生活した。

或る日、あの出欠ランプの名札の中に赤い文字で書かれているものが在る事に
気が附いたWは、其の事について近くに居た人に訊いてみた。
すると如何やら、其の赤い名前の人達の行方が判らないらしいのだ。

こうして一年が過ぎ、Wは「ミドルネームが無い事を誇りに思った」という
嫌疑を掛けられ、「全く其の通りです」と述べた後、
死の十三階段を軽快に駆け上がり、吊り下がる縄を首に掛けた。

うっとりしている内に目が覚めた。

◇ ◆ ◇

・・・久し振りに明確に記憶に残る夢を見たかと思えば、
内容は極めて退廃的で、気持ち悪いとしか云い様がありません。

勿論、起床後の脚色は多分に有ります。今回見た夢の内容が一部、
フランツ・カフカの『夢』に似ているなと思って、意図的にパロディとしたものです。

そうだとしても、余りに飛躍し乍らも繋がってゆくこの頭の物語、
強ち実存主義者にとっての脅威を示したものともいうべきでしょうか。

自分は其の様な「主義」等とは無縁だと思っていたら、
あの『アウシュヴィッツの後で詩を書くことは野蛮である』というテーゼを
消化出来ていなかった、という事なのでしょうか。

[ 2009 / 12 / 31 更新 ]