2013年2月17日日曜日

白き茨のクローリクと黒き力のショコラートル

学部生論文は大抵の場合、それが提出された大学のデータベースと、執筆した本人のデータベースにのみ保存され、やがては消えていく運命にあると言っても過言ではないと思います。「大学全入時代」と謳われる現代、学府によっては論文を書く機会も得られぬままに学生生活を終えるということもままあります。日本の大学は、学生に対して知的創出を求めることをもしかしたら一部で放棄してしまったのかもしれません。ただ、それは逆にチャンスでもあるかもしれません。そもそも、学部生論文に注がれる社会的視線がほとんどないのなら、学部生は学者や知識人のように社会的地位や経済的波及効果などといった「しがらみ」を考慮に入れず、大胆で斬新な切り口で論文を書いてもいいのです。学者や知識人には扱いにくい領域であっても、大学で培った確かな観察眼と、情報を集約・精練して正しい論理構成を組み立てれば、論じることができる……そういうことはある意味、学部生の強みと言えるのではないでしょうか。

指導教授との相談の中でこう諭されたボクは、もしかしたら幸せ者だったのかもしれません。それまで大学では全く触れてこなかった「擬人化動物文化」をトピックに挙げ、最終的には「ファーリー・ファンダム (furry fandom) 」に到る経緯までも論文に認めてしまうという、冒険をしました。そう、危険を孕んだ冒険であって、自分にとってこれは「楽しい」などといった簡易な言葉で言い表せるものではなかった、そう、振り返ります。

そんなこんなで、指導教授の推薦を受け、学内の発表会の論壇に立つことになった1のですが、なにぶんこの分野は一般の方々にはなかなか見えづらいものですし、そもそもこの発表会が「これから論文を (強制的に) 書かなければならない」人たちのためでもありましたから、つまらないプレゼンテーションにはしたくありませんでした。そこで、思い切って……

突如学府に召喚され、慌ててしまったのか帽子を忘れてしまったうさぎさん (豅リリョウ撮影、2013年1月31日)
たまたまお暇と仰っていたうさぎさん (by manglucaさん) を召喚することにしました。女性の多い学部でしたから、はてまたは学府に着ぐるみという奇抜さからか、個人的な感触としては「ウケは上々」でした。アマチュアで、着ぐるみを制作してパフォーマンスをするグループがある、ということ自体初耳の方が多かったので、「本当に個人で作ったものなのですか? すごい! かわいい!」という感想が寄せられたことはうさぎさんにとってもきっと喜ばしいこと……だったことと思します。

ちなみに、現段階では執筆した論文の公開予定はありませんが、日本のそうしたイベントでパネル展示等が行われるのであれば、発表して反応を見てみたいと考えています。「どうして人間は、動物を擬人化することができたのか?」を、約200年間の創作文化を辿ってルーツを探ってみたという内容になっております。

 ◇ ◆ ◇

発表会を終えて数日後、オフモードになったボクは小学校来の親友二人と「チョコレート展」へ赴きました。場所は上野の国立科学博物館、棟は違いますがちょうど改築の終わった後の展示会でしたね。

フライヤーと入場チケット。チケットの遊び心が面白い。 (豅リリョウ撮影、2013年2月7日)
個人的には、チョコレートの甘ーい歴史だけでなく、苦ーい歴史ももっと深く掘り下げてほしかった念があります。チョコレートもいわゆる「ブラック・パワー」、列強各国による搾取の歴史を持っています。どのように植民地化政策を進めていき、どんな現象を起こしてしまったのか? そういった苦い歴史がぼかされ、文字通り「甘い」チョコレートの魅力についての紹介に終始していた印象が強いです。ただ、友人曰く「ここまで本格的とは思わなかった」との評で、それはボクも同感です。特に、チョコレート系企業とのタイアップで設けられた日本におけるチョコレート菓子の歴史コーナーは、自分たちにも馴染みのあるようなもののバックグラウンドを垣間見ることができ、仲間内での会話が特に弾みました。ですから、「甘い」と一蹴するのではなく、好い意味で「楽しい」特別展示会となっていたと思います。

さて、上野の会場を出て、三人は山手線沿いを徒歩で秋葉原方面へと向かいました。なんでも、高架橋下にアートスペースがあるのだとか。その情報を信じて、ぶらりと歩いていると……

高架橋下なのにこの明るさ。2k540 AKI-OKA ARTISAN (豅リリョウ撮影、同上)
確かにありました! 「2k540 AKI-OKA ARTISAN (ニーケーゴーヨンマル アキオカ アルチザン) 」と名付けられたこのアーティストアレイは、「ものづくり」をテーマにしたアトリエショップの集合体です。時間も時間だったので店には立ち寄らずウインドウショッピングをしておりましたが、こうした雰囲気は嫌いではないです。

その後、秋葉原駅前で少しのんびりと一服をしてから各々は帰路につきました。

1 ボクの大学では、すべての学部生論文が発表されるのではなく、各ゼミナールの指導教授がそれぞれ一人ずつ自分のゼミナールから推薦する形で発表会を構成します。

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最後は、動画コーナーでございます。


Furry Gangnam Style! from EZwolf on Vimeo.

アマチュア着ぐるみ映画『ビター・レイク (Bitter Lake) 』製作に関わったオランダのイーズィーウルフ (EZWolf) さんの動画です。